製造業の改善活動、あれもこれもになっていませんか?

食品製造業の現場では、日々さまざまな改善活動が行われています。
原価低減、歩留まり改善、不良削減、残業削減、設備稼働率向上、在庫削減、5S活動。
どれも重要な取り組みです。
しかし、改善テーマが増え続ける一方で、人も時間も限られています。
現場は懸命に取り組んでいる。それなのに、会社全体の利益は思うように改善しない。
このような状況はないでしょうか。
私は経営企画と工場経営の双方を経験してきました。
その中で強く感じているのは、改善活動を増やすことと、会社の利益を増やすことは同じではないということです。
経営が優先順位を決めず、すべての改善を現場に求め続ければ、改善活動そのものが現場の負担になりかねません。
重要なのは、何を改善するかだけでなく、何をやめ、何を後回しにするかを決めることです。
■ 改善テーマが増えても、利益が増えない理由
多くの工場では、部門ごとに改善目標が設定されています。
品質部門は不良率の低減。
製造部門は生産性の向上。
設備部門は稼働率の改善。
管理部門は在庫や経費の削減。
それぞれの目標は正しくても、会社全体の利益につながっているとは限りません。
例えば、設備稼働率を高めるために生産量を増やした結果、売れない在庫が積み上がってしまう。
残業時間の削減を優先した結果、納期対応が難しくなり、販売機会を失ってしまう。
原材料費の削減を進めた結果、品質が不安定になり、廃棄や再加工が増えてしまう。
こうしたことが起きれば、個別の改善指標は良くなっていても、会社全体では利益が減る可能性があります。
部分最適の改善を積み重ねても、必ずしも全体最適にはならないのです。
だからこそ、改善テーマを評価するときには、会社全体の損益とキャッシュへの影響を確認する必要があります。
■ 改善活動を利益につなげる4つのステップ
改善活動を経営成果につなげるためには、次の4つのステップが重要です。
① 利益への影響を見極める
最初に確認すべきなのは、その改善が会社全体の利益にどれだけ貢献するかということです。
例えば、不良削減によって、原材料や包材の廃棄をどれだけ防げるのか。
段取り時間の短縮によって、生産能力をどれだけ改善できるのか。
在庫削減によって、資金負担をどれだけ軽減できるのか。
設備更新によって、品質や生産性がどこまで改善するのか。
商品構成の見直しによって、利益率や生産負荷がどう変わるのか。
改善の効果を可能な範囲で金額や時間に置き換え、比較することが重要です。
ただし、品質や食品安全など、金額だけでは判断できない事項もあります。
食品安全と法令遵守を前提に、利益への貢献度を見極めることが基本です。
② 改善テーマに優先順位をつける
改善テーマの重要性が分かっても、すべてを同時に実行することはできません。
人員、設備、資金、時間には限りがあるからです。
そこで、改善効果の大きさに加えて、実行の難易度、必要な投資、実現までの期間などを確認します。
例えば、短期間で大きな効果が期待できる改善と、多額の設備投資が必要な改善では、進め方が異なります。
また、効果が大きくても、現場の負担が過度に増えるようでは、継続的な成果につながりません。
経営が全体を見渡し、何を先に実行するかを判断する必要があります。
③ やめること、後回しにすることを決める
ここが、経営にとって特に重要な判断だと考えています。
改善テーマを追加することは比較的容易です。
しかし、これまで続けてきた活動をやめることには、抵抗が生まれる場合があります。
それでも、効果が乏しい活動や、優先順位が下がった活動を見直さなければ、現場の負担は増え続けます。
会議や報告資料の作成も同様です。
報告すること自体が目的になっていないか。
改善活動の進捗確認に必要以上の時間を費やしていないか。
経営は、こうした業務も含めて見直す必要があります。
何をやるかを決めることと同じくらい、何をやめるかを決めることが重要です。
④ 人・設備・時間を重点テーマに集中する
優先順位を決めたら、実際に経営資源を配分します。
重点テーマを決めたにもかかわらず、人員配置も設備投資も教育時間も変わらない。
これでは、方針を示しただけで終わってしまいます。
必要なのは、担当者、実行期限、必要な予算、設備、教育、部門間の支援体制を具体化することです。
そして、改善の進捗だけでなく、利益や生産性への効果を確認することです。
経営判断が資源配分に反映され、現場の行動が変わって初めて、改善活動は成果につながります。
■ 現場の努力では解決できない問題がある
工場の改善活動を考えるうえで、もう一つ忘れてはならないことがあります。
それは、現場の努力だけでは解決できない問題が存在するということです。
例えば、採算の合わない商品を作り続けるのか。
多品種少量生産による負荷をどう見直すのか。
老朽化した設備を更新するのか。
限られた人員をどの商品や工程に配置するのか。
販売計画と生産能力のずれをどう解消するのか。
これらは、製造部門だけでは判断できません。
営業、商品開発、生産、品質、設備、財務など、複数の部門に関わる問題だからです。
私は、研究開発、商品開発、経営企画、工場経営に携わる中で、こうした部門間の問題を数多く見てきました。
その経験から、工場の改善を本当の利益改善につなげるためには、経営が部門の壁を越えて判断することが欠かせないと考えています。
■ 改善活動を「頑張る仕組み」から「利益を残す仕組み」へ
現場に改善を求めること自体が悪いわけではありません。
しかし、改善活動の数や実施件数だけを評価していては、本来の目的を見失う可能性があります。
重要なのは、改善活動を通じて、会社の利益構造がどう変わったかということです。
商品別採算は改善したか。
生産能力を有効に活用できるようになったか。
品質ロスや在庫は減ったか。
人員や設備を、より利益につながる領域へ振り向けられたか。
そして、その成果が損益やキャッシュに表れているか。
ここまで確認することが必要です。
改善活動を増やすのではなく、成果につながる活動に絞る。
現場の努力に依存するのではなく、経営が判断し、実行を支える。
それが、利益を残せる会社へ変えていくための重要な考え方です。
■ 経営者の皆様に確認していただきたいこと
最後に、三つの問いをお伝えします。
① 御社の改善テーマは、会社全体の利益への影響を踏まえて優先順位が決められていますか?
② 効果が乏しい活動や、優先順位が下がった活動を、やめる判断ができていますか?
③ 重点テーマに合わせて、人員・設備・予算・時間の配分を実際に変えていますか?
現場は日々、品質を守り、生産を支え、改善を積み重ねています。
その努力を会社全体の成果につなげるのは、経営の役割です。
利益は現場で生まれる。利益を残すのは、経営である。
この考え方を、私は大切にしています。
ODAビジネスパートナーズから
ODAビジネスパートナーズは、食品製造業の経営者の皆様に対し、商品別採算、原価、品質、生産、設備、人員・組織、経営戦略を一体で捉え、利益構造改革を支援しています。
研究開発から商品開発、経営企画、工場経営までの経験を活かし、改善テーマの整理だけでなく、経営判断と現場での実行までを重視しています。
「改善活動は続けているのに、利益が思うように改善しない」
「課題が多すぎて、何から着手すべきか判断できない」
そのような状況がありましたら、ぜひご相談ください。
初回相談では、お話を伺いながら、**「どこから手をつけるべきか」「何を経営が決めるべきか」**という論点を整理してお返しします。
すべてを一度に変える必要はありません。
まずは、会社の利益に大きく影響する問題を見極めることから始めましょう。
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