コラム

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稼働率98%の工場が、なぜ静かに衰弱していくのか ―― 経営者が最初に壊すべき「製造至上主義」「売上至上主義」

事例紹介

「今月の稼働率は98%です。フル稼働でした。」

この報告に、安心した経験がある経営者は少なくないでしょう。
設備は止まっていない。人もフルで動いている。
一見すると、理想的な工場の姿です。

しかし私は、30年以上にわたり製造業の現場と経営の両方に立ってきて、
この言葉を聞くたびに、強い危機感を覚えてきました。

「この会社は、利益を生むためではなく、
作業を回すために経営しているのではないか」

稼働率が高いことと、会社の利益が増えることは、必ずしも一致しません。
むしろ、過剰な稼働率が会社を静かに窒息させているケースを、
私は何度も目にしてきました。

稼働率とは、
「どれだけ設備や人を使ったか」という手段の数字です。
一方で、経営が真に問うべきは結果です。

・現金は増えたのか
・利益は残ったのか
・次の投資に耐える体力はついたのか

この問いに、稼働率は答えてくれません。

稼働率を最優先にすると、現場は
「作るための理由」を必死に探し始めます。
出荷予定のない製品を前倒しで作り、倉庫に積み上げる。
原材料費と人件費は先に消え、
製品は現金化されないまま眠り続ける。

現場は多忙を極め、
数字上の稼働率はさらに跳ね上がる。
それでも、手元の現金は確実に減っていく。

これが、
「忙しいのに、なぜか苦しい」という構造の正体です。

在庫は、会計上は資産です。
しかし経営の実感としては、
動かなくなった現金にすぎません。

この状態を1年続けると、
資金繰りは硬直し、
判断は遅れ、
設備更新や人材投資の選択肢が静かに消えていきます。

これは突然の破綻ではありません。
気づいたときには戻れない「静かな衰弱」です。

工場経営で真に追うべき指標は、
稼働率ではありません。

スループット(Throughput)です。
売れて、現金として会社に残った価値。

問いは、
「何を作るか」ではなく、
「何を作らないか」に変わるべきです。

私の仕事は、稼働率を下げることではありません。
会社が生き残るために、
止める判断ができる状態を取り戻すことです。

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