現場と経営の「断絶」はなぜ起きるのか? —— 3つのズレと、工場長の本当の役割

現場と経営の間には、深い断絶があります。
私はこれまで、大手メーカー系の経営戦略や役員として、そして中堅企業の工場長や執行役員として、両方の世界を歩いてきました。 そこで痛感したのは、「現場と経営は、同じ会社の中にいながら、まったく違う世界を生きている」という事実です。
経営は「戦略」を語り、現場は「今日の生産を回す」ことに必死。 両者の視点は、驚くほど違います。
なぜ、ここまで話が噛み合わないのか。 その断絶が生まれる理由は、構造的な「3つのズレ」にあります。
- 言語が違う
現場と経営では、使っている「公用語」が異なります。
現場の言語:「歩留まり」「段取り」「不良」「チョコ停」
経営の言語:「利益率」「投資回収(ROI)」「キャッシュフロー」
同じトラブルを見ても、現場は「技術的な問題」として語り、経営は「損失金額」として捉えます。 使う言葉が違うため、“伝わったつもり”が“伝わっていない”という悲劇が、多くの会社で起きています。
- 時間軸が違う
見ている「時計」が異なります。
現場:「今日」を止めないことが最優先。
経営:「3年後の姿」を描くことが役割。
この時間軸のズレが、意思決定のスピードと優先順位を大きく狂わせます。 現場からすれば「今すぐ直してほしい」ことでも、経営から見れば「来期の投資計画の中で考えたい」ことかもしれません。このギャップが不信感を生みます。
- 評価軸が違う
ここが最も根深い問題です。何が「正義」かが異なります。
現場の正義:「安定稼働」(変化を嫌う)
経営の正義:「成長と利益」(変化を求める)
どちらも、それぞれの立場では正しいのです。 しかし、この正義の違いが、現場改革における最大の摩擦(すれ違い)を生みます。
「翻訳者」としての工場長
では、この断絶を誰が埋めるのか。 それこそが、工場長(現場リーダー)の役割です。
どちらか一方の味方をするのではありません。 現場の汗を「経営の言語(数字)」に翻訳し、経営の戦略を「現場の行動(実務)」に落とし込む。
私はこの橋渡しを**「現場発の経営改革」**と呼んでいます。 単なる伝書鳩ではなく、「翻訳者」が間に立った瞬間、現場と経営は初めて繋がり、組織は一気に動き始めます。
あなたの会社には、この2つの世界をつなぐ「翻訳者」はいますか?



